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麹たちの“よろこび”が伝わる!焼酎王国・宮崎でコアなファンの心をつかむ「須木(すき)酒造」

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美しい水が豊富な宮崎県では、焼酎づくりが盛んです。日本全国でたくさんの人に飲まれている宮崎県発祥の焼酎も多いなか、とりわけコアなファンに愛されているのが、「須木(すき)酒造」の焼酎。

手づくりにこだわり、国産米を使用して手作業で麹を仕込み、130年以上の歴史を持つ瓶や壺を使って、ていねいに、大切に。一度お店で口にして「あの味が忘れられない」と、わざわざ蔵を訪れる人も少なくないのだとか。

今回は、そんな「須木酒造」の焼酎づくりへのこだわりをお伝えします。

“これからの100年”に、願いを込めて

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須木酒造は、小林市で100年以上焼酎づくりを続ける蔵元さんです。小林市街地から車で約30分、小野湖からほど近い自然豊かな場所に蔵を構えています。




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現在の蔵は、2010年に移転してきた新しいもの。

「移転のタイミングが焼酎ブーム後だったことから、『儲かったから造り変えたの?』と聞かれることも多かったんです。でも、そういうわけではないんですよ」と語るのは、取締役の児玉昇(こだま のぼる)さん。

「創業100年を迎えたことを機に、これからの100年も、今まで以上においしい焼酎をつくり続けていこう、ということで、思い切って蔵を新しくすることになりました」(児玉さん)

結果的に蔵の移転は、須木酒造にとって大きな転機となり、さらにファンを増やすことへとつながったのです。いったい“蔵の移転”が、どのように焼酎づくりのレベルアップに影響を与えたのでしょうか。

そこでカギになったのは、“杜氏(とうじ)さん”の存在でした。

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お酒にとって最高の環境づくり

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“杜氏”とは、日本酒や焼酎をつくる蔵における最高責任者のこと。

現在須木酒造で杜氏を務めるのは、内嶋光雄(うちじま みつお)さんです。

内嶋さんは小林市のご出身で、19歳で当時小林に工場があった鹿児島の酒造会社に入社後、長年焼酎づくりに携わり続けてきました。多くの杜氏に伝統的な焼酎造りの技を伝える「大杜氏」にも抜擢された、実力者です。

大杜氏を務めていたころは屋久島の工場に在籍していましたが、ご家族の暮らす小林市へ戻り、焼酎づくりを続けていくことに。

熱いラブコールによって、須木酒造の杜氏を務めることになりました。

「長年焼酎造りに携わられてきた内嶋さんが、地元に帰ってくるということで。ほかの酒蔵さんからも、何件も声がかかっていたとのことでしたが、『ぜひうちで、地元の焼酎をおいしくしてほしい』とお声掛けしました」(児玉さん)

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新しい蔵は、この内嶋さんがほぼすべてをプロデュースして誕生したそう。焼酎にとって最高の環境をつくるため、空気の流れや気温の変化にも細かく気を使い、窓の位置など蔵の構造のすみずみまでこだわっています。


山の緑に囲まれた土地も、風や日光の当たり方を自然の力が調整してくれるということで、焼酎づくりにぴったりなのだとか。

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蔵が動き出して、年々進化を遂げている

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そして、お酒と蔵の関係において重要なのが、“蔵付き酵母”の存在です。

蔵付き酵母とは、その名の通り「蔵に宿っている酵母」のこと。
お酒の味は、杜氏さんや蔵子さんの技とともに、この蔵付き酵母の質が大きく影響します。

蔵を移転するとなると、前の蔵から木材も移し、蔵付き酵母も受け継ぐことが一般的だそう。でも、須木酒造では「まったく違うものをつくりたかったから」(内嶋さん)と、あえてゼロから蔵を造り直しました。

お酒の味をぐんと進化させるためにも、思い切って酵母から生まれ変わらせるようにしたのです。

良い蔵付き酵母を育てるためにとにかく大切なのは、衛生管理。

「毎日、たわしやタオルで蔵のすみずみまできれいに磨いています。掃除をしなければ良い焼酎はつくれない、というのが、私の師匠たちの教えだったから」(内嶋さん)

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須木酒造の蔵の中に入れるのは、内嶋さんと、蔵子さんでもある息子さんの2人のみ。
出入りする人が多いほど雑菌が入り込んでしまうため、管理が徹底されています。

「人によって持っている菌も全然違うので、出入りする人が多ければそのぶん余計な菌が増えてしまう。その結果、数年かけて徐々に味が落ちていってしまうこともあるんです。本来ならばこの規模の蔵には3〜4人つくり手が必要だけど、自分と息子以外は絶対に入れません」(内嶋さん)

蔵の移転から8年以上が経過し、蔵付き酵母の質も年々良くなり続けていると、内嶋さんは自信を持って話します。

「蔵が動き出した」ことを実感できるほどに、お酒の味がどんどん進化しているのです。

では、いったいその味、どんなおいしさなのでしょう。

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甘めも、辛めも。好みの味がきっと見つかる

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須木酒造の焼酎の魅力のひとつ。それは、とにかくバリエーションが豊富なことです。

すっきりとキレのよいもの、あま〜い香りが口から鼻いっぱいに広がるもの、お芋や麦の味をとにかく濃厚に感じられるもの……など、飲み比べればすぐに違いを実感できるほど。

通常、杜氏は一人の師匠から技術を受け継ぎます。そのため、蔵ごとの味の特徴もある程度定まってくるのです。

一方で内嶋さんは、杜氏さんたちの世代交代のタイミングに居合わせるなど偶然も重なり、4人の黒瀬杜氏(鹿児島県の伝統的な焼酎づくりの技を受け継ぐ杜氏)から技術を教わったそう。

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そのおかげで、4人から受け継いだ技術をさまざまに組み合わせ、タイプの異なる焼酎を生み出せるようになりました。

「甘いのが好きという人もいれば、苦手な人もいる。味の好みは人それぞれだけど、うちに来れば、かならず自分に合った焼酎に出会ってもらえるようにと、幅広いタイプのものをつくっています。飲み比べてみたら、きちんと味が違っていてびっくりすると思いますよ」(内嶋さん)

今では、蔵付き酵母の状態が良くなっていることも相まって、「こういう焼酎をつくろう」とイメージしたとおりのものができるようになったのだとか。

内嶋さんは、「田舎のばあちゃんの料理みたいなもんですよ」と笑います。自由自在に生み出される色とりどりの味は、確かな技術と、長年の経験があってこそなのですね。

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焼酎が、生きている

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最後に、内嶋さんのエピソードをひとつ。

焼酎の仕込み時期のある日、内嶋さんが仮眠をとっていると、
「すみませーん」
と聞こえたのだとか。
だけど、電気をつけて辺りを見まわしても誰もいません。
「なんやったんやろか」
と思いながらも蔵の様子を見にいってみると、ちょうど麹をかき混ぜるべき温度になったタイミングだったそう。

「きっと内嶋杜氏には、麹たちの声が聞こえているんじゃないかと思うんです」と、児玉さんは話します。

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今回、須木酒造の焼酎づくりについてお話をうかがって、麹も、蔵も、蔵付き酵母も──焼酎は生きものなんだと感じさせられました。

おいしい焼酎をつくるために、いっさい妥協しない。

とにかくていねいに、すみずみまでこだわってここまで大切にされているのだから、それぞれに魂が宿っていても不思議ではありません。

きっと、一度飲んでみれば、麹たちがよろこんでいるかのような味わいを、実感できるはずですよ。

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